白蝶の雑記帳

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マニアックという分類は今でも口語的に使うけれど「マニア」は居なくなってしまった印象 ~オタク論~

こんばんは白蝶です。
今回は「オタク」に関して思いついたことを雑に書き連ねていきます。


2010年代以降「オタク」という言葉を使う人が多くなり、今では若者皆オタク化のようなことが何処かしこで述べられています。まあこれは基準がゆるくなっただけで、女性のバストのカップ数が昔より大きいみたいな話だと思います。


私はまだぴちぴちの20代なので時期的に「マニア」という言葉を同世代間で使ったことはありません。ただし子供の頃は「マニア」という概念が死んでおらずゲームや小説で語られることはあった気がします。当時のイメージは「マニア」は収集家のこと、特にフィギュアやレトロ玩具、アニメのセル画とか古いものを収集することを指して居たと思います。「オタク」もう少し軽くサブカル方面に熱中している人という認識でした。

オタク認識の変遷

オタク認識の変遷は下記の通り、有名な説明なので納得しやすいと思います。
www.dwc.doshisha.ac.jp

昔は他者からの蔑称としてのラベリングでしたが、今現在は同族同士で繋がるために自称として使用する形式名詞と化しています。今ではオタクというだけでは何オタクと聞き返されてもおかしいことではありません。

現在のオタク事情

現在のオタク事情は下記、繊維月報で概ね正しい気がします。(伊藤忠商事発行、2021年7月)
https://www.itochu.co.jp/ja/business/textile/geppo/202107/geppo_vol735.pdf
※調査対象が女性のみのため割合についてはおそらく偏りがあることに注意


コンテンツへの関わり方にも外向型~内向型のグラデーションがあり、友人とイベントに足繁く通う人や収集癖のみで他者との関わりを持たない人が居て、当然極端な人は少なく大多数が両要素を併せ持っています。


オタクという言葉の認識の変遷は直感的にはスマートフォンの普及・SNSの普及と関連していると思います。
5chなんかに入り浸っているとアニメオタクのような若者が多いように感じますし、SNS(サービスにも依存するが)を見るとアイドルオタクが多いようにも感じます。それぞれ住みやすい生息地が異なっているということです。


若者間でオタク認識に侮蔑・拒絶の意味が薄れて数年経ちますが、それにしても現在は外向型オタクの認識が強烈のように感じます。
コンテンツをコミュニケーションツールとして使用して「コト消費」を重視する、それがぼくのかんがえた現代のオタクの若者間での認識です。

ManiacとUniqueの違い

直接的な関係は薄いのですが、養老孟司先生の講話をぼけーっと聞いていたら偏差値が話題に挙がりました(36分くらいから)。養老先生は東大医学部で学んで教えていた人ですから、統計値から外れた人を多く見てきているはずです。東大生なんて上位2%とか1%とかの人達ですから同世代全体としてみれば異常値です。所謂ランキングは上位を求めつつも、身体的な健康にまつわる数値、遺伝子に関しては平均値を求められます。身体は平均値で安定するが意識・脳は異常値を望んでいるというダブルスタンダードが無意識下にあります。それを変だと思わないのはやっぱり脳が自分を棚上げしているからだなと。これは「唯脳論」など読んでいる人はご存知でしょう。


さて、Maniacは「熱狂家」という意味、Uniqueは「独特」という意味です。
Maniacは正規分布の偏差値上位の方の値、Uniqueは前提条件が違うためデータのポイントとしてカウントできない値と考えるとしっくりとします。*1
Uniqueという概念はそれ自体がUniqueのため今回は言及しません。
私の認識では「モノ消費」の一部がManiacと思っていましたが、再考すると方向性は無関係のように感じます。

オタク関係なく、日常的にも他の人がそこまで掘り下げないであろう知識・技術に対してマニアックだと言うことはありますね。
所謂「マニア」とManiacの意味は似て非なるものとなっています。

オタク関連の言葉について

2次元関係でも「推し」という言葉を聞くようになりました。もともとはアイドルオタクの間で使われていたと思います。2次ヲタ界隈では「嫁」が使われていました。
オタク関連の言葉は多くがマーケティング戦略として作り、普及させられているように感じます。

「アニオタ 推し」「アニメ 推し」でGoogle検索すると両方の単語でヒットする記事は2014年くらいから増えてきています。こういう場合期間指定で古いものだけ調べるの便利です。
私もそうでしたが、昔は「好きなアニメキャラ」と表現していて「推し」とは呼んでいませんでした。ただし、女性は割と昔から使っている人もいるようです。

note.com
2015年の腐女子の方の記事ですがこの方は推しという言葉を使っていませんね。そういう方も居ます。


「推し」という言葉は好きなキャラクター、コンテンツどちらにも使えて、「推し活」「推し事」で所謂「オタ活」と似たような意味で使えるので非常に便利で広まったのも頷けます。
ただ「推し」を文字通り捉えようとすると下記が混在しているため言葉の意味を考えがちな人は使いづらいと感じているはず。

  • グッズ購入やライブ参加で金銭的に後押ししている対象
  • 他者にも嵌るように勧める対象*2
  • 単に好きな対象


流行っている言葉を使うと、ユーザーのコミュニケーション戦略上共感が得られやすく、流行っているものに人が集まるのでマーケティング戦略上でも都合が良いです。
特に女性のコミュニケーションツールとして機能している点が上手いものだと思います。



2014年の記事で、こちらの方がテグジュペリの言葉を借りて「推すとはメンにこっち向いてもらおうとすることではなく、推しメンと同じ方向を見つめること」と述べています。
2次ヲタとしては実感ありませんが、ドルヲタの感覚はこういうものなのでしょう。確かに他の方の文章見ていてもそれが伝わってきます。
ameblo.jp


2018年の記事で「好き」と「推し」の違いを述べている方がいらっしゃいました。
note.com


「萌え」=「魅力的」?

「推し」とは違い「萌え」は2次元界隈で使われていました。最近は使う人減った気がします。
「萌えキャラ」「萌え絵」といえば「らきすた」のようなデフォルメ化が激しいキャラクターや絵柄のことを指していました。「推しキャラ」とは違い自分がそのキャラを好きかどうかという感情は関係なく、イラストやキャラクターの描かれ方といった記号的な使われ方をしています。
「萌える」というときは「推せる」と似たような感情的な使われ方ですが、当然ながら対象が実在しないため応援するという意味はありません。
使用範囲をキャラクターに絞った「エモい」の類義語です。


尊い」は恐らく次元問わず使う人がいるのではないかと思います。
「天使」は2次ヲタのみが似たような意味で使いますね。


自分はどうか

検索していたら女性ですが自分と似たような方がいらっしゃいました。幸い私は黒歴史的なものは持っていないのですが。
note.com


オタク分析の論文

2009年の論文で下記のようなものがありました。自分の体感では8割程は納得できる内容なので何箇所か取り上げて紹介します。
ci.nii.ac.jp


東浩紀さんのオタクの定義として下記を挙げている。

近年のオタク論において,もっとも参照され,引用される東によれば,オタクとは,「コミック,アニメ,ゲーム,パーソナル・コンピュータ,SF,特撮,フィギュアそのほか,たがいに深く結びついた一群のサブカルチャーに耽溺する人々の総称」である


オタクとマニアの違いが明確でないこと、2009年の時点でマニアという語の意味がオタクに内包されていることに言及している。

ここでは,オタクの方が用語として新しいこと,マニアにはオタクほどのネガティブイメージが付与されてこなかったこと,近年はオタクの語でマニアをも含むような使われ方をすることなどを確認しておく.


虚構を求める姿勢そのものが人をオタクたらしめていると思います。

オタクにおいてより重要なのは,虚構重視の態度である


オタクの「自分だけの虚構」を求める姿はときに独占欲のように映ります。

斎藤は,このようにオタクが二次創作を求める姿について,ありものの虚構をさらに「自分だけの虚構」へとレベルアップする手続きであると述べている

売れていないほど,イベントやオフ会で直接コミュニケーションがあり,「個」としての自分が承認されるという(擬似的にでも)感覚をもちやすい.よって,売れていないがゆえに「自分だけの虚構」を保持したり実感するのが容易であり,こうしたオタクたちの態度や感性が,マイナーなアイドルを支えているのではないだろうか


萌えに関しては下記の通り。現実と虚構の区別がつかない人は稀ですね。

「萌え」とは,たとえば森川の「特定のキャラクターやキャラクターを構成する特定の部分的要素に惹かれ,好みに感じること」

オタクは,よく指摘されるように,虚構に接しているうちに,現実と虚構の区別がつかなくなっていくということはない.彼らが,作り物の絵にセクシュアリティを感じるのは,現実と虚構を混同しているからではない.そうではなく,現実と虚構の区別がつき,作り物であることをきちんと認識した上で,それでも感情移入してしまう態度が「萌え」なのである


オタクを自称するのは訴えであるという論。私はそれを見て嫌悪感を覚えることがありますが、これは掘り下げて考えるべきだと思いました。

若者に与えられた多くのカテゴリーは,サックスが言うように大人が与えたカテゴリーであって,若者たちが積極的に自らを表す言葉としては使われてこなかった.しかし,オタクは,当のオタクたちによって用いられ,自らをカテゴライズする言葉となっている
(中略)
こうして,オタクが自らをオタクと定義し,語り始める.オタクとは何かをオタクが論じるということは,オタクがアイデンティティの問題であることを表している.それは,オタクたちが常に軽蔑の視線にさらされ続けてきたことと無縁ではないだろう.


最後の方でオタクの定義に関してこのように締めくくっている。

オタクとは,自らをオタクと称するものとし,各オタクが使うオタクという言葉の意味を記述していくことが,オタクのリアリティに迫りうる方法であろう.

最後に

まとまり無く、オチもありませんが疲れたのでこの辺で。
書いていて今後別の観点で記事がかけそうでした。

  • アイデンティティの主張に嫌悪感を抱く理由
  • コミュニケーションツールとしてのオタク増加とSNSの関係
  • 「コト消費」「モノ消費」とオタクの関係

などなど。

最後に、ブログ書きながら聴いていた好きな音楽を貼っておきます。
それではまた。

*1:独特・個性も養老先生がよく話していますね

*2:よく推薦の意味と言っている人がいるが推奨だろと思ってる